メイクサロンが常設になったころ、韓国のトップサロンとの提携の話が動き出しました。そして、メイクだけでなく、ヘアサロンもやろうという話になっていきます。
2025.8
ソウル・清潭洞の「JOY187」と提携。
菅原が続けていたK-POPの仕事のなかで、ある名前が出ました。多くのK-POPアイドルや俳優が通う韓国のトップサロン、ソウル・清潭洞の「JOY187」。
「一度、会ってみないか」
会いに行きました。JOY187が日本に出るのは、これが初めてでした。組む相手に選ばれたのが、私たちでした。
メイクサロンで提携したあと、ヘアサロンも一緒にやれないかと考え始めました。
周りの反応は、メイクのときと正反対でした。
韓国トップサロンと組むなら、
メイクより美容室のほうが絶対にうまくいく
私たちも、その気になっていました。
2025.9
ヘアサロン「JOY187 in YU1L」プレオープン。
しかし。
「日本のサロンと、全然違うやり方ですね」
お客様から、こういう声が届きました。
韓国のヘアサロンは、日本のヘアサロンと、驚くほど違います。
接客
丁寧に、お客様としてもてなす
友人のように、気さくに
施術時間
手ぎわよく、短時間で
ひとつずつ、時間をかけて
パーマ
巻き方も薬剤も、日本の方式
巻く手順から、まったく別の組み立て
髪質
日本人の髪質は、やわらかく繊細な方が多い
韓国人の髪質は、しっかりとしたコシのある方が多い
シャンプー
やさしく、ていねいに洗う
地肌をしっかりほぐす。マッサージを兼ねている
技術が足りないのではありません。JOY187のやり方は、韓国では最高峰です。
韓国の薬剤も、施術の力加減も、その髪に合わせて組まれたものです。同じものを、同じ力で、そのまま日本のお客様に使うわけにはいきませんでした。
本物を、日本のお客様に受け取っていただく。そこに、私たちのやることがありました。
見えている景色が、違いました。
日本人のスタイリストには、すぐ分かりました。このままでは、日本のお客様は戸惑う、と。
韓国人のスタイリストには、分かりませんでした。それが当たり前のやり方で、ずっとそれでやってきたからです。疑う理由が、どこにもなかった。
ここが、いちばん時間のかかったところでした。
韓国人スタイリストに、「日本のお客様に合わせてほしい」と伝えました。本場でやってきたプロです。ものすごく揉めました。
それでも、粘り強く話し続けました。決め手になったのは、お客様の声でした。実際に何を言われたのか、一つずつ伝えました。
やがて、日本人スタイリストのほうから、言葉が出てきました。
「技術は韓国式、サービスは日本式」
私たちが出した答えではありません。現場が、自分たちで見つけた答えでした。
日本人スタイリストは、全員アシスタントに戻りました。
日本で経験を積んだスタイリストに、一度アシスタントに戻ってもらいました。一人ではありません。全員です。
韓国の技術を、一から。研修を重ね、満を持して、デビューしてもらいました。
経験のある人に「もう一度アシスタントから」と言う。それがどういうことか、分かったうえでお願いしました。
そこから、一つずつ変えていきました。
- 施術のたびに、日本式と韓国式の両方を説明する。ご希望をうかがったうえで、韓国式も理解していただく
- 施術時間の長さは、受け入れていただく。代わりに、その時間の過ごし方をいくつも用意した
- ガウンは、あえて受付で着ていただく。「これが韓国式です」と、説明を添えて
- パーマは、カウンセリングに時間をかけ、日韓の違いを先にお伝えする
- 薬剤は、日本の薬剤で韓国の仕上がりが出せるまで調整した
- 日本のお客様の髪に合わせた施術方法を、新しくつくった
2026.2
ヘアサロン、グランドオープン。
日本のお客様に合わせた形が、ようやく固まりました。
2026.9いま
プレオープンから、ちょうど1年。
あの戸惑いの声は、ほとんど届かなくなりました。
メイク「うまくいかない」と言われたほうには、待っていたお客様がいた。
ヘア「うまくいく」と言われたほうには、乗り越えるべき課題があった。
どちらも、やってみるまで分かりませんでした。私たちにできたのは、目の前のお客様を見て、そのつどつくり変えることだけでした。
[写真・未取得]スタイリストとの相談風景/施術中の様子